life
2025.04.18
テレビをつけるだけで認知症予防に
ガンマ波サウンド™で、人類の課題に挑む
株式会社東北ケーブルテレビネットワーク

2025年3月26日に行われた「ガンマ波サウンドケア東北展開プロジェクト合同記者発表会」。写真左が株式会社東北ケーブルテレビネットワーク 代表取締役社長の吉村和文さん。中央は塩野義製薬株式会社 執行役員の三春洋介さん、右がピクシーダストテクノロジーズ株式会社 ディレクターの藤森智彦さん(場所:山形グランドホテル)
フレイル※という言葉をよく耳にするようになった昨今、高齢化社会は、これからの日本にとってますますの課題になってきています。そんな世の中に一石を投じるプロジェクトが、ここ山形を起点に発動しました。大手製薬メーカーの塩野義製薬株式会社(以下、SHIONOGI)と、革新的な技術開発で注目されるピクシーダストテクノロジーズ株式会社(以下、PxDT)、そして株式会社東北ケーブルテレビネットワーク(以下、TCN)。この3社がタッグを組み、認知症対策の未来を変えるかもしれない、秘策を発表しました。その記者会見の内容をレポートします。
※フレイル・・・健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと
脳波の一種、ガンマ波に注目した認知症予防
脳波には5つの種類があることをご存知でしょうか。リラックスした状態時に発生するアルファ波、覚醒時に発生するベータ波、浅い睡眠のときにあらわれるシータ波、熟睡時に発生するデルタ波。そして集中している時に発生する脳波が、ガンマ波です。ガンマ波は、年齢を重ねると減少するといわれ、アルツハイマー型認知症の方は、健常者に比べガンマ波が出にくくなる、という研究結果も発表されています。このガンマ波に注目し、SHIONOGIとPxDTは2021年から認知症に特化した共同研究を行ってきました。SHIONOGIの執行役員でヘルスケア戦略本部長の三春洋介さんは当時の想いを振り返ります。

「我々はもうすぐ150周年を迎える、いわゆる老舗の製薬企業ではありますが、薬だけでは解決できないこと、ヘルスケアの課題についても長年取り組んできました」と三春さん
「2040年には、65歳以上の約3人に1人が認知症、もしくはその予備軍になると予想されており、人類にとっても極めて重い課題であると捉えています。がん治療でさえ、薬の貢献度が高くなっているにも関わらず、認知症に対する特効薬は未だ発展途上にあります。薬の開発には10年~20年の長い年月を要するため、平行して何ができるか試行錯誤していた頃に、PxDTさんとの出会いがありました」
両社は2021年から共同で認知症予防、認知機能改善の取り組みを開始。その中でガンマ波サウンド™という特殊技術を開発しました。「我々の医薬品開発で蓄積した科学的データと、PxDTさんの波動を制御するという工学の技術が見事にマッチングした好例」と三春さんは言います。
40Hzの周波数にして音を届けるガンマ波サウンド™

ガンマ波サウンド™のイメージビジュアル(PxDTの公式Webサイトより)PxDTは、2017年に創業した筑波大学発のディープテック※スタートアップ企業。音や光などを自在に操る独自の「波動制御技術」を得意とし、さまざまな領域において社会の課題解決につながる技術を開発し、世間でも一目置かれています。(代表取締役会長CEOは落合陽一さん)
※ディープテック・・・社会課題を解決して社会に大きなインパクトを与える科学的な発見や革新的な技術のこと
三春さんに続き、PxDTのディレクター、藤森智彦さんがガンマ波サウンド™の特徴について説明しました。
「マサチューセッツ工科大学が『40Hzの断続音を聞かせることで、ガンマ波を呼び起こすことができる』という研究結果を2019年に発表しました。その研究では、単調なブザー音を使っていましたが、日常生活に溶け込むような音の刺激でガンマ波を呼び起こすことができないか、とSHIONOGIさんと共同で開発したのがガンマ波サウンド™です」両社は、ガンマ波サウンド™を「生活に溶け込む認知機能ケア」として導入できるよう、ガンマ波サウンド™で音声が聞けるスピーカー「kikippa」を開発。以降、各種パートナー企業と連携し社会実装とエビデンスの構築を進めてきました。

社会実装を開始し、認知機能改善の効果も
「介護老人保健施設 国立あおやぎ苑(東京都国立市)では、ガンマ波サウンド™を6カ月間聴いた認知症患者が、周辺症状「BPSD」(暴言・暴力・介護拒否など)に改善が見られた、という実証も確認できるようになっています」と藤森さん。
ショッピングモールのBGMや、スポーツジムクラブの認知機能低下予防プログラムに導入されるなど「各地でガンマ波サウンド™を活用する動きが始まっている」と言います。
「今回、TCNさんとタッグを組むことで、東北から世界に先駆けたモデルの創出ができることは、非常に意義のあること」と期待を寄せます。
エンターテインメント業界だからこそ、できること
この画期的な技術、ガンマ波サウンド™を、山形・東北からどのように展開していくのか。今回のプロジェクトの経緯と今後の展開について、TCN代表取締役社長の吉村さんから説明がありました。
「弊社は2024年の8月、ZEXA TVさんのチャンネルを開局し、放送とWeb3※を融合した新しい番組の配信を始めました。その中で音に特化したチャレンジが進んでいることを教えていただき、SHIONOGIさんとPxDTさんとお会いする機会をいただき、本プロジェクトが立ち上がりました」
高齢化に伴う認知症患者の増加の問題は、高齢化率が全国平均を上回る東北地方でも大きな課題であり、自分たちのようなエンターテインメント業界でも、何かできないかを模索していたそうです。
「TCNは東北地方のケーブルテレビ17局が加盟する、高齢者をはじめ、誰にとっても利用しやすい、地域に根差したメディアです。今回、まずは10局からご参画いただき、6月~7月からガンマ波サウンド™の番組を放送してまいります」
「市民チャンネルの中で、一日数回、健康に関する番組などを配信していく予定」と吉村さん。「ZEXA TVではガンマ波サウンド™を用いた連続ドラマなどが放映されているので、ぜひ、体験してみてほしい」とも言います。
※Web3(ウェブスリー)・・・ブロックチェーン技術を活用して分散型(非中央集権)的に運営されるインターネットの新しい形

記者会見では、ガンマ波サウンド™を変調した音声の映像と、通常の音声の映像の聴き比べも行われました。背景の音とボーカル部分を分け、背景音を中心に40Hzの変調をかけているそうです。人の声にあまり違いはありませんが、よく聴くと背景の音声が少し揺れて聴こえるような印象があります
東北初の、新しいモデルで全国へ

フォトセッションで握手を交わす、吉村さんと三春さんと藤森さん。左端はTCN専務取締役の阿部新一さん
記者会見では多くの質疑応答も行われ、ガンマ波サウンド™への関心の深さが伺われました。誰もがなり得る「認知症」という病気に立ち向かおうとするこのプロジェクト。山形・東北の地からスタートする意義について問われると、それぞれが熱い想いを述べました。
「ガンマ波サウンド™を放送波に取り入れた初の取り組みです。いろいろ規制もある中で実現ができ、本当に嬉しく思います。東北エリアは高齢化が進んでいる地域と伺っておりますが、ここから始めるということは、非常に意義のあることと思っています」(藤森さん)
「我々ケーブルテレビ局というのは、各家庭のラストワンマイルを預かっている会社です。地域に根差したテレビ局として、このような社会課題にいち早く取り組んでいかなければなりません。まずは10局114万世帯へ向けてのスタートですが、いずれは17局165万世帯すべてにお届けできるようにしたいと思っています」(吉村さん)
「エビデンスの構築という面ではこれからなので、非常に期待を寄せています。テレビは毎日触れられるものですので、毎日一定時間聴くことができるというのは、他のロケーションでは得られないことです。研究解明の糸口を見つけていく、という意味では、極めて重要なことなのではないかと思います」(三春さん)
認知症対策への新しい活路が、山形・東北の力から世界へと発信されていくことに、興味と期待が膨らみます。常に新たなチャレンジとプロジェクトを発信しているTCN。これからも私たちにワクワクを届けてくれるに違いありません。今後の活動に注目です。
株式会社東北ケーブルテレビネットワーク
http://www.tcatv.co.jp
株式会社ダイバーシティメディア
https://www.diversitymedia.jp